他人の靴の中と外

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実在する人間

茶館の記録:圓心茶荘(習志野市)

 自宅居室の一角にローテーブルを置いてお茶飲み場兼茶器・茶葉等置き場にしていたものを、このほど居室のほぼ中央に移し茶座として独立させました。容疑者は容疑を認めたうえで「むしゃくしゃしてやった。とても満足している」などと供述しているということです。容疑者宅に滅多に客は来ませんがもし来ても茶でもてなす体制だけはばっちりです。素晴らしい。あとはなんだかんだ見境なく買い込みすぎて茶葉ストッカーから溢れかえっている茶葉の整理を試みる間にさすがに容疑者比2%くらい我に返ったので、このストッカーに収まる量になるまでは新規の茶葉購入をなんぼかセーブするかと…。過去実績でもっともお高い茶壺に手を出してしまったこともあり、やっと茶器まわりの物欲も多少は落ち着いたはずだしなあ。

 

 謎の一人称(三人称?)もほどほどにしつつ、今回はそんな個人のささやかな茶座など目じゃないこだわりの詰まった茶館にお邪魔したレポです。

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 習志野市は京成大久保に店舗を構える圓心茶荘。内装を特集した建築業界向けのWebマガジン記事がヒットしたのでリンクをご覧いただくと面白いと思いますというか、内装の詳細な説明や写真だけでなくお茶提供のステップまで書いてあるのでもう俺の記事なくてもいいんじゃない?的な。しかしインテリア、まじでこんなつくりなの?コンセプトアートとかイメージボードとかじゃなくて?と疑いたくなりますがまじでこんなつくりでした。中国茶台湾茶好きなら一度くらいこういう茶座を夢見たことあるでしょとか雑いことを口走りたくなるが、実際実現しちゃってるんだものな……こりゃお見それした。

architecturephoto.net

 詳しくはお店のホームページやインスタグラムを見ていただくほうがいいと思うのですが、こちらは台湾にある同名(というかそちらが元祖)のお店をきっかけに現在のご店主さんが学ばれた結果暖簾分けのようなことが可能になって今に至っているそうです。では台湾茶のお店なの?というとそれだけでもないそうで、プーアル生茶を中心にした雲南産の古樹の茶葉にも力を入れておられるよう。

 オペレーションの関係で予約のみの営業となっており、私はインスタグラムのダイレクトメッセージで日時の依頼をしてお邪魔しました。のどかな商店街の一軒家のガラス張りのドアから上のコンセプトアート(違います)がよく見えるという…入店しやすいのかかえってしにくいのかは各々の判断に委ねます。ブログ管理人はそこに中国茶台湾茶の取り扱いがあると聞けば超ローカルな港町にも激狭な路地の奥にもやや薄暗いオフィスビルにも外国のお店にも足を踏み入れるのであまり参考にならない。

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 上のWebサイト然り公式に提供されている情報が多いお店でもあるためあんまりこちらからの説明が長引いてもな、ということで飲食の話に移ってしまいましょう。

 木化茶丹という古樹黒茶、大まかにはいわゆるプーアル生茶をいただきました。ちなみにさらっと先に書いてしまいましたが古樹茶というのはそのまま樹齢の長い木から採取した茶葉のことね。中国茶台湾茶には陳年茶/老茶(これは茶葉を採って製茶した後に手入れしつつ長い時間を置いたものを指します)という概念もあるので初期に戸惑いがちな要素ではある。

 写真は2煎目以降、自分の前に一式を置いていただいたあとの様子ですが、このお店も1煎目はご店主さんが淹れてくださいます。私の場合は注文を選ぼうとして会話している間にまったくの初心者というわけではないのが伝わってしまったので(いやまあ隠すようなものでもないが…)あとはご自身でどうぞ〜という流れになりましたが、おすすめの蒸らし時間を書いたカードを添えてもらえたりもしますし、不安があれば2煎目以降もサーブをお願いできるのではと思います。まあしかし綺麗な茶壺を扱わせていただいてしもうた。客自身が茶壺を触るとなるとどうしても養壺にムラができやすいものなのですが、どうも使用中以外の時間にめちゃくちゃ手をかけて育てていると見た。突然独り言を言いはじめましたがスルーしてください。いつか説明するかもしれないし私などが説明せんでもみなさんご存知かもしれない。

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 お茶を頼むとお茶請けをセットでいただけます。いや肝心の茶の話はどうした。インテリアやら茶器やらのクオリティのほうにやや目が行きすぎですが、お茶もしっかりおいしかったです。生茶を聞香杯を使って飲むのが初めてでちょっと意外だったものの、手をきちんとかけるならぜんぜんありだなと思いました。少なくともこのお茶の場合の話ですが、香りだけだと若い紅茶みたいな甘さと爽やかさを感じるのに飲んでみるとしっかり生茶の味という。店内提供の他の生茶も気になります。自分ちでダラダラ飲む時に果たしてお前は聞香杯を使うのかどうかというところに性格が出ますが……

 

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 こちらはご店主の茶座。イメージボードかな?(もうええ)

 1煎目を支度してくださる時の手捌きをほおと眺めるところまで含めていわゆる茶芸体験というやつですね。これはもう各位来店してご覧になってくださいとしか。ちなみにここに限らず店内写真は基本的にお店のかたに撮っていいか確認してから撮るようにしています念のため。

 お茶を楽しみつつ、ご店主さんがお茶の勉強をされていたときの書き込みでいっぱいのテキスト(もちろん中国語)なども少し見せていただいたりして、いやあ自分も自分のジャンルの勉強頑張らにゃならんですわ……

 

 ちなみに、お店は私がお邪魔した時はお二人で切り盛りされていました。さっきから既にご店主と書いてしまっていますがご店主であろう方がお茶全般、パートナーらしき方が食事をメインでカバー、というような大まかな分担になっていそうな雰囲気ではありつつ、どちらもお茶にも詳しい様子が見受けられましたし、食事のほうも然りでした。大きくはない店舗なので当たり前といえば当たり前なのかもというのはあれど、お互いで回しておられるんだなというムードも安心感がありました。
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 写真の映りが突然変わったのはスマホになったからである。お店でメニューを拝見してはじめて知ったのですが軽食も意外と充実していて、この時点だと餃子か具材入りの饅頭を日替わりで提供、ほか自家製のパイナップルケーキも頼めるというかおすすめいただいたのは11時の開店と同時にお邪魔した身としてだいぶ嬉しかったです。めちゃ手え込んではるやん……

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 パイナップルケーキを頼んだ姿。上の餃子及び元々つけていただいていたお茶請けと合わせ、がっつりランチというよりはあくまで「軽食」ながら、お茶を楽しむことを目的として入ったお店なので最適と言っていいメニューや食事量だったと思います。いわゆるおやつの時間にお邪魔する場合はお茶優先でもいいわけですし。プーアル茶もぴったり10煎までいただいたように記憶しています。

 私は2時間半程度でお暇しましたが予約枠は3時間で取っておいてもらえるようで、急かされることもなくどえらい贅沢を味わいました。あんまりこのブログでダイレクトに値段の話はしていないのですが、こういう内容で飲み食いして過ごすことに対してだとかなり気軽な価格だと思います。とはいえまあその、中国茶台湾茶の茶葉やティーハウスの相場自体がそもそもだいぶ…という前提はあるのでそこは加味したうえで。しかしこの営業体制、果たして持続可能なだけの利益出ているんだろうか。やや心配になるくらいにはいい意味でこだわりの伝わってくるお店でした。

 ちょっと注意点として、取り扱いが「台湾茶(主に烏龍茶と一部紅茶)」と「雲南省の茶葉(主にプーアル生茶と一部紅茶、もしかすると今後白茶も?)」で若干ピンポイントなところ、わかりやすさのためだと思いますがそれらを一緒にした状態で味わいの違いなどがメニュー図で説明されたりするため、まったく予備知識がない状態だと終わったあとに結局なんだったんだろう的な状態になってしまう可能性もゼロではないな…とは思いました。もちろん客側の雰囲気に合わせて誠心誠意アセスメントしてくださるだろうなとは予測できるのですが、少々で構わないので先に中国茶・台湾茶自体に親しんでおいてからのほうがお店のコンセプトまで含めて楽しみきれるかな、という気がします。

 

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